橋本翔太の心理療法とは

橋本翔太が心理療法で伝えたいこと

心の問題を解決するために、何でもかんでも、心理カウンセリングをうければいいというものではありません。その時の心理状態、コンデイション、抱えている問題によって、受けた方がよい心理療法は異なります。

心理学がなんでも効くわけではない

例えば、心療内科に付属しているカウンセリングルームなどでよく行われる「認知行動療法」も心理学のメソッドのひとつです。うつなど心の不調によって歪んでしまった認知(考え方)を少しずつ修正して、新しい考え方を身につける方法論です。

ところが、この認知療法(あるいは他の心理療法)を行うには、うつからある程度回復していることが大切です。ズンと重いマイナス状態にいて、起きるのもやっとの人は、心理面に取り組むのは早すぎます。心理メソッドに取り組むにはある程度のエネルギーが戻らないと効果も出ません。身についた心のクセ(考えクセ)や傷を治すには、自分と向き合えるくらいにまでエネルギーが回復していることが大切です。自分と向き合えるくらいまでエネルギーを回復させるためには、栄養療法と音楽療法を活用します。

例えばアドラー心理学で辛くなる人がいる

2014年からブームになったアドラー心理学も、誰にでもはおすすめできません。私もアドラー心理学はブームの前からずっと好きな心理学のジャンルの一つで、よく勉強していたのですが、アドラー心理学は、元気な人が取り組むことでより効果を発揮します。マイナスを抜けた人たちです。どちらかというと自分を鼓舞するための自己啓発に近い心理学なのです。一歩間違えると自責の念が強くなって、余計に自分を責めてしまいます(実際アドラー心理学を読んで苦しくなってしまった方も少なくありません)。アドラー心理学はかなり自分に厳しい心理学なので、それに持ちこたえるくらいエネルギーが回復している必要があります。(栄養療法と音楽療法を活用しましょう)

アドラーは「今の自分が不幸なのは、過去に原因があるのではない」といいます。「過去に原因があるから、前に進めないのではなく、前に進まないために過去について悩むのだ」という捉え方をします。この意見には僕も半分賛成します。実際、過去にしがみつき、他人のせいにしつづけることで症状を悪化させている人もいるからです(それが本人にとって得なので、無意識に回復を選ばないという状態です。ダブルバインドもこれにあたります)。しかしこれが万人に当てはまるわけではなく、過去の感情をよく噛んで消化する(感じ切る)ことで回復する人もいます。過去にアプローチする方法は、現在は個人セッションで扱っています。

森田療法もバランスが大切

大正時代に活躍した精神医学者・森田正馬によって確立された精神療法「森田療法」によって、心が楽になる方もいらっしゃいます。フロイトやユングから派生した精神分析療法をメインとする、心の苦しみを取り除こうとする西洋的な心理学とは違い(認知行動療法もこれに含まれます)、森田療法は東洋的で日本人らしい哲学的なアプローチで、苦しみの原因を取り除こうとするのではなく、受け入れることに重点を置きます。

「できること(自分の努力で変えられること)」をおろそかにせず、「できないこと(自分ではどうにもできないこと)」は放っておく。
●不安を感じるのは自然なことであり、その自然な流れをどうにかしようともがくから、悩みが深くなり、症状も現れてくるのだ。
●不安を感じるのは当然のことであり、不安は不安のままに、今、目の前のことをすればよい。それで充分生きていける。そうすれば、おのずと解決策が見えてくるものである。

このように苦しみや不安を特別視せずに共生を目指します。この発想により生きるのが楽になる人もいます。私も森田療法には助けられました。しかし森田療法もアドラー心理学と同様に、エネルギーがある程度残っている人には効果がありますが、エネルギーが枯れ果てた人には、ガマン療法になりかねません。森田療法もある程度回復した人、もしくはうつがひどくなる前に取り組むことが大切だと思います。

過去を見つめ消化すること、過去は放っておくこと、どちらも正解

拙著『大丈夫、あなたの心は必ず回復する』(KADOKAWA)では、森田療法的な発想をメインに、過去にアプローチせずに、不安と共に歩きながら心を回復する方法を書きました。 アドラーも森田も、「過去が原因ではない」「過去は清算しなくていい」と明記しています。実際に、辛い過去に縛られず、むしろそれをバネにして今を明るく生きている人も沢山います。しかしこれも数あるうちの一つの心理アプローチであり、誰にでも効く万能薬ではありません。

実際、過去を蒸し返して悪化させてしまう事例が(カウンセラーの力不足も原因なのですが)、1997年になって心理学者で記憶研究の専門家エリザベート・ロフタスによって提示されています。これは「精神疾患の原因は何もかもPTSD(心的外傷ストレス障害)」という説の反動でもあるのですが、過去のトラウマ記憶にアプローチする治療を受けることで、治療前よりも悪化してしまった患者の例をロフスタは明示しました。(私も大学院でPTSDを深く学びました)

過去にアプローチすることで良くなる人もいる。バランスが大切。

逆に、拙著「聴くだけうつぬけ」では、過去にアプローチして感情を消化するためのメソッドをご紹介しました。過去にアクセスすることが回復につながる人もたくさんいることを実感しています。アダルトチルドレンや毒親の問題を避けては通れない人がおり、それがうつやパニックのひとつの要因になっている場合もあるのです。

ここでも忘れてはいけないことは、過去にアプローチするのも、ある一つの心理メソッドであり、過去を癒すことが心の回復の全てではありません。過去を見ない逆のメソッドの森田療法が効く人もいます。しかも回復過程によって、その時に合う心のアプローチ方法は変化していきます。

とにかく「この心理療法だけで治る!」という話は信用しないことです。難しく考えることはなく、「この心理学が全てだ」と断定しないことです。そのゆるさが、なによりもあなたを助け、あなたに合う心理療法を見つけやすくなるキーになります。橋本翔太の心理セッションでは、あなたにどの心理メソッドが必要なのかのご提示もしていきます。